たねやつの木

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AIに2時間かけた上司と15分で解決した新人、その差はどこにあったのか?

こんにちは、たねやつです。

最近、海外の掲示板Redditで「上司がAIを使って2時間悩んだ問題を、新人の私が15分で解決したら怒られた」という投稿が話題になっていました。これは、AIと人間の協業が当たり前になった現代において、非常に示唆に富むエピソードです。

今回はこの出来事をもとに、AI時代における問題解決の本質と、私たちに求められるスキルについて考えてみたいと思います。

この記事から考えること

  • AIと人間の専門知識の適切な使い分け
  • 問題解決における「なぜ」の重要性
  • AIを「使いこなす」ために本当に必要なスキルとは何か

発端となったRedditの投稿

まずは、元となった投稿の概要をまとめます。

ある企業で、上司がAIチャットボットを駆使して2時間も格闘している問題がありました。AIは非常に複雑で技術的にも高度な解決策を提示していましたが、何かがうまくいかない様子。

それを見ていた投稿者(新人の従業員)が、上司に一つだけ質問をしました。「そもそも、なぜその作業が必要なのですか?」

すると、問題の本質はもっと単純なところにあり、投稿者はたった15分でそれを解決してしまいました。しかし、上司は助かったと感謝するどころか、自分の時間を無駄にされたと不機嫌になってしまったそうです。

この話、なんだか他人事とは思えない方も多いのではないでしょうか?

なぜAIは「遠回り」な解決策を提示したのか

このエピソードの核心は、「上司とAIの対話」と「新人と上司の対話」の質の違いにあります。上司はAIに対して、おそらく「どうやって〇〇を実現するか?」というHowを尋ねていたのでしょう。

これは典型的な「XY問題」に陥っている状態です。 「Xをしたいのに、Yという解決策が正しいと思い込み、Yの実現方法ばかりを尋ねてしまう」という問題です。

AIは、与えられた質問(プロンプト)に対して最も確率の高い答えを返すのが得意です。しかし、その質問の裏にある「本当の目的」「背景」を汲み取ることはまだ苦手です。上司が間違った前提で質問を続ければ、AIもその前提に沿った、的外れで複雑な答えを延々と生成し続けてしまいます。

15分で解決した新人、2時間かけた上司

一方、新人が行ったのは「Why(なぜ)」を問うことでした。

「なぜその作業をしているのか?」

このたった一つの質問が、上司が囚われていた「Yという解決策」という思い込みをリセットし、本来の目的「X」に立ち返らせました。問題の本質が見えれば、解決策は驚くほどシンプルだったのです。

ここに、AIと人間の決定的な違いがあります。 人間は、相手の状況や表情、会話の流れといったコンテキストから、「この人は本当にやりたいことを見失っているのではないか?」と推測し、対話を通じて軌道修正を促すことができます。

この新人は、特別な技術知識をひけらかしたわけではありません。ただ、問題解決の基本である「本質的な課題は何か?」を問いかけただけです。

AIは銀の弾丸ではない

この一件は、AIが決して万能の「銀の弾丸」ではないことを教えてくれます。

  • AIは思考の補助輪: AIは、私たちの知識を補い、作業を効率化するための強力なツールです。しかし、何をすべきか、どの道が正しいかを最終的に判断するのは人間です。
  • 基礎知識の重要性: AIの出力を鵜呑みにせず、それが本当に正しいのか、もっと良い方法はないのかを判断するためには、その分野の基礎的な知識や経験が不可欠です。
  • 問う力が価値になる: これからの時代、単に答えを知っていることの価値は相対的に下がっていきます。それよりも、「何を問うべきか」「本質的な課題はどこにあるのか」を見抜く力、すなわち課題設定能力がますます重要になるでしょう。

上司がもしAIを「壁打ち相手」として使い、自分の考えを整理したり、別の視点を得たりするために活用していれば、もっと早く解決策にたどり着けたかもしれません。

最後に

AIの進化は、私たちから仕事を奪うものではなく、私たちの働き方や求められるスキルを変化させるものです。

今回のエピソードは、AIに依存しすぎて思考停止に陥ることの危険性と、人間ならではの対話や本質を見抜く力の重要性を改めて浮き彫りにしました。

AIという強力な相棒を使いこなし、より創造的な仕事をしていくためにも、常に「なぜ?」と問い続ける姿勢を忘れないようにしたいですね。

参考・引用