たねやつの木

Photographs, Keyboards and Programming

なぜあなたのAI動画は素人っぽい?『wan2.2』を"映画監督"に変えるカメラワーク設計術

こんにちは、たねやつです。

テキストから動画を生成するAI「wan2.2」は非常に強力ですが、ただ単語を並べるだけでは、どこか素人っぽく、動きのない映像になりがちです。「猫が歩いている」と入力すればその通りの動画は生成されますが、それだけでは人の心を動かす作品にはなりません。

プロが撮影したような映像と、AIがただ生成した映像。その違いを生み出す最も大きな要素の一つがカメラワークです。

この記事では、あなたのwan2.2を凡庸な記録係から才能ある"映画監督"に変えるための、カメラワークに特化したプロンプト設計術を解説します。

この記事でできること

  • 基本的なカメラショットの種類を理解し、プロンプトで使い分けることができる。
  • カメラを動かす(パン、チルト、ズームなど)プロンプトで、映像にダイナミズムを与えることができる。
  • カメラワークの組み合わせで、映像の感情や雰囲気を意図的にコントロールできるようになる。

カメラワークが映像の"言語"である理由

カメラワークは、単に被写体を映す方法ではありません。それは、視聴者に何を、どのように感じてほしいかを伝えるための「映像言語」です。

例えば、被写体に下からカメラを向ける「ローアングル」は威圧感や雄大さを表現し、逆に上から見下ろす「ハイアングル」はキャラクターの弱さや孤独感を示唆します。

wan2.2にこれらの"言語"を教え込むことで、私たちはAIに映像の意図を伝え、より高度な表現をさせることが可能になります。

基本的なカメラショットを使いこなす

まずは、すべての映像の基礎となる基本的なカメラショットをプロンプトで指定する方法です。

広角ショット (Wide Shot / Long Shot)

被写体とその周囲の環境を広く映し、状況を説明するためのショットです。物語の始まりや、場面転換でよく使われます。

プロンプト例:

wide shot of a lone warrior standing on a cliff, overlooking a vast valley.

崖の上に一人立つ戦士のワイドショット。広大な谷を見下ろしている。

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ミディアムショット (Medium Shot)

被写体の上半身や腰から上を映す、最も標準的なショットです。会話シーンなどで、キャラクターの表情とジェスチャーをバランスよく見せたいときに使います。

プロンプト例:

medium shot of a detective interrogating a suspect in a dimly lit room.

薄暗い部屋で容疑者を取り調べる刑事のミディアムショット。

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クローズアップ (Close-up)

被写体の顔や特定のオブジェクトを大きく映し、感情やディテールを強調するためのショットです。キャラクターの喜び、悲しみ、驚きなどを視聴者に強く伝えたいときに絶大な効果を発揮します。

プロンプト例:

close-up of a tear rolling down a woman's cheek.

女性の頬を伝う一粒の涙のクローズアップ。

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映像に命を吹き込む「カメラの動き」

静的なショットをマスターしたら、次はカメラ自体を動かして、映像にダイナミズムと感情の起伏を生み出しましょう。

以下のプロンプトですがwan2.2特有の問題なのかLoRAを使っているか現在不明ですが、なかなか安定してうまくカメラの動きを表現してくれません。もう少し調べてみてわかったら記事に追記しておきます!

パン (Panning)

カメラを水平方向に振る動きです。風景をゆっくりと見せたり、動く被写体を追いかけたりする際に使います。ですが縦長動画では何度か試してみたのですがうまくいきませんでした。固定画もしくは手振れのような感じのショットとなってしまいます。この辺りはwan2.2特有の癖があるのかもしれません。

プロンプト例:

panning shot from left to right, revealing a beautiful sunset over the ocean.

左から右へパンし、海の美しい夕日を映し出すショット。

チルト (Tilting)

カメラを垂直方向に振る動きです。高い建物の全貌を見せたり、キャラクターの足元から顔へと視線を誘導したりする際に使います。

プロンプト例:

tilting up shot of a giant redwood tree, from its base to the top.

巨大なセコイアの木を、根元からてっぺんまで見上げるチルトアップショット。

ドリーズーム (Dolly Zoom)

カメラを被写体に近づけながら(ドリーイン)、同時にレンズを広角側にズームアウトさせる(ズームアウト)高度なテクニックです。背景だけが歪むような独特の視覚効果を生み出し、キャラクターのめまいや衝撃、天啓の瞬間などを表現するのに使われます。

プロンプト例:

dolly zoom effect on a man's face as he realizes a shocking truth.

衝撃的な事実に気づいた男の顔へのドリーズーム効果。

手持ちカメラ (Handheld Camera)

ドキュメンタリーやアクションシーンでよく使われる、意図的に手ブレを加えた撮影方法です。臨場感や緊迫感を高める効果があります。

プロンプト例:

shaky handheld camera footage following a group of soldiers running through a battlefield.

戦場を走る兵士の一団を追いかける、揺れる手持ちカメラの映像。

最後に

今回は、wan2.2でプロ品質の映像を生成するための第一歩として、「カメラワーク」に焦点を当てたプロンプト設計術を解説しました。

最初は難しく感じるかもしれませんが、まずはwide shotclose-upといった基本的なショットから試してみてください。そして、panningtiltingといった動きを加えることで、あなたのAI動画がどれだけ表現豊かになるかを実感できるはずです。

AIにただ「描かせる」のではなく、あなたが「監督」としてAIに指示を出す。この感覚こそが、AI動画生成の最も面白く、創造的な部分なのです。

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