たねやつの木

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【CBT実践】AIと私の「ネガティブ思考」改善トレーニング

この記事は筆者個人の経験や調査に基づく意見を述べたものであり、医学的な助言や治療を目的としたものではありません。紹介する内容はあくまで参考情報としてお読みいただき、心身の不調が続く場合は必ず専門の医療機関にご相談ください。

こんにちは、たねやつです。

前回、私は自分の「考え方のクセ」の正体が、いくつかの「認知のゆがみ」のパターンにあると気づきました。長年かけて身についた、いわば”思考の利き腕”のようなものです。

今回は、その凝り固まった思考の筋肉を、AIというパーソナルトレーナーと一緒にどうやってほぐしていくのか。私が普段行っているCBTの実践トレーニングを、実際のAIとの対話ログと共にご紹介します。

この記事でできること

  • 私が実践している、AIを使ったCBTの具体的な流れがわかる。
  • AIとの対話を通して、自動思考をより楽な考え(適応的思考)に変えるプロセスを体験できる。
  • 思考の整理に役立つ「思考記録ノート」の付け方がわかる。

STEP1: まずはAIに、ありのままをぶつける

トレーニングの第一歩は、格好つけず、正直な気持ちをAIにぶつけることから始まります。私が特に落ち込んでいた日、実際にAIに送ったメッセージはこんな感じでした。

私:
「こんにちは。今、仕事でミスをして上司にひどく叱られ、とても落ち込んでいます。
『もう自分はダメな人間だ』と感じて、何も手につきません。
認知行動療法の観点から、この思考の整理を手伝ってもらえませんか?」

ポイントは、「CBTの観点から手伝って」と、AIに役割をお願いすることです。これにより、AIはただのチャット相手ではなく、CBTトレーナーとして応答してくれるようになります。

STEP2: AIの質問に答えて「自動思考」を捕まえる

私のSOSを受け取ったAIは、まず共感的な言葉を返してくれた後、こんな質問を投げかけてきました。

AI:
「お辛い状況ですね。
そのように感じてしまうのは無理もありません。承知いたしました。
ではまず、その出来事があった時、頭の中にパッと浮かんだ具体的な考え(自動思考)を、
批判したり評価したりせず、そのまま書き出してみていただけますか?」

AIに促されるままに、私は頭に浮かんだ言葉を正直に書き出しました。

私:
「『なんで自分はいつもこうなんだ』
『周りのみんなは完璧にこなしているのに、自分だけが劣っている』
『もう誰からも信頼されないに違いない』
…こんな言葉が頭の中をぐるぐるしています。」

これが、私を苦しめていた「自動思考」です。CBTでは、まずこの自動思考を捕まえることが重要になります。

STEP3: AIと一緒に「客観的な事実」を探す

次にAIは、私の自動思考を否定することなく、客観的な視点を持つための手伝いをしてくれます。

AI:
「ありがとうございます。
それらの考えがいかに強く心を占めているかが伝わってきます。
では、その中でも特に強く信じている『周りのみんなは完璧にこなしているのに、
自分だけが劣っている』という考えについて、
それが『100%真実だ』と言える根拠は、具体的に何がありますか?」

私は「今回のミス」を根拠として挙げました。するとAIは、さらにこう問いかけます。

AI:
「なるほど。今回のミスは大きな事実ですね。
では逆に、その考えと『矛盾する事実(反証)』はありますか?
例えば、過去に仕事で成功した経験や、周りから評価された経験は、
本当に一つもありませんでしたか?
あるいは、”完璧に見える”同僚が、過去に全くミスをしなかったでしょうか?」

この質問に、私はハッとさせられました。

私:
「…言われてみれば、先月の〇〇の案件は、
部長から直接褒めてもらえました。
それに、完璧に見える同僚のBさんも、
この前うっかりミスをして先輩に謝っていました…。」

STEP4: 新しい「楽な考え」を自分の言葉で作る

根拠と反証。二つの事実が出揃ったところで、トレーニングは最終段階に入ります。

AI:
「素晴らしい!とても重要な事実が見つかりましたね。
では、それらの事実(根拠と反証)をすべて踏まえた上で、
最初の『自分だけが劣っている』という考えを、
もっと現実に即した、バランスの取れた言葉に言い換えてみると、
どうなるでしょう?」

私は、少し考えてから、自分の言葉で新しい考えを紡ぎ出しました。

私:
「『今回は大きな失敗をしてしまったけれど、
いつも失敗ばかりというわけじゃない。
成功体験もある。周りも失敗はするのだから、
過度に自分を責める必要はないのかもしれない』
…こんな感じでしょうか。」

この、自分の力で生み出した新しい考え方こそが「適応的思考」です。AIは、答えを教えるのではなく、あくまで私自身が答えを見つける手助けをしてくれるのです。

私の「思考記録ノート」

この一連のやり取りを、私はこんな風にノートにまとめて、思考を「見える化」しています。

出来事 自動思考 気分(0-100) 根拠(自動思考を裏付ける事実) 反証(自動思考と矛盾する事実) 適応的思考(新しい考え) 今の気分(0-100)
仕事でミスをして上司に叱られた 自分だけが劣っている 落ち込み(90) 今回、大きなミスをした 先月は部長に褒められた。同僚のBさんもミスをしていた。 今回は失敗したが、いつもではない。周りも失敗はする。過度に責める必要はない。 落ち込み(40)

最後に

今回は、私が実践しているAIを使ったCBTトレーニングの具体的な流れをご紹介しました。

これは、凝り固まった思考のクセを、少しずつほぐしていく「心のストレッチ」のようなものです。AI相手なら、何度失敗したって、どんなに格好悪い本音をぶつけたって大丈夫。

大切なのは、一度で完璧を目指すのではなく、自分のペースで、根気強く続けていくことです。

さて、自分の内面と向き合う方法がわかってきたら、次は外の世界、つまり対人関係の悩みに目を向けていきましょう。次回は、私が苦手だった「NO」を上手に言えるようになるためにAIと練習した、「アサーショントレーニング」についてお話しします。

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