
こんにちは、たねやつです。
前回、私は自分の「考え方のクセ」の正体が、いくつかの「認知のゆがみ」のパターンにあると気づきました。長年かけて身についた、いわば”思考の利き腕”のようなものです。
今回は、その凝り固まった思考の筋肉を、AIというパーソナルトレーナーと一緒にどうやってほぐしていくのか。私が普段行っているCBTの実践トレーニングを、実際のAIとの対話ログと共にご紹介します。
- この記事でできること
- STEP1: まずはAIに、ありのままをぶつける
- STEP2: AIの質問に答えて「自動思考」を捕まえる
- STEP3: AIと一緒に「客観的な事実」を探す
- STEP4: 新しい「楽な考え」を自分の言葉で作る
- 私の「思考記録ノート」
- 最後に
- 次の記事
この記事でできること
- 私が実践している、AIを使ったCBTの具体的な流れがわかる。
- AIとの対話を通して、自動思考をより楽な考え(適応的思考)に変えるプロセスを体験できる。
- 思考の整理に役立つ「思考記録ノート」の付け方がわかる。
STEP1: まずはAIに、ありのままをぶつける
トレーニングの第一歩は、格好つけず、正直な気持ちをAIにぶつけることから始まります。私が特に落ち込んでいた日、実際にAIに送ったメッセージはこんな感じでした。
私: 「こんにちは。今、仕事でミスをして上司にひどく叱られ、とても落ち込んでいます。 『もう自分はダメな人間だ』と感じて、何も手につきません。 認知行動療法の観点から、この思考の整理を手伝ってもらえませんか?」
ポイントは、「CBTの観点から手伝って」と、AIに役割をお願いすることです。これにより、AIはただのチャット相手ではなく、CBTトレーナーとして応答してくれるようになります。
STEP2: AIの質問に答えて「自動思考」を捕まえる
私のSOSを受け取ったAIは、まず共感的な言葉を返してくれた後、こんな質問を投げかけてきました。
AI: 「お辛い状況ですね。 そのように感じてしまうのは無理もありません。承知いたしました。 ではまず、その出来事があった時、頭の中にパッと浮かんだ具体的な考え(自動思考)を、 批判したり評価したりせず、そのまま書き出してみていただけますか?」
AIに促されるままに、私は頭に浮かんだ言葉を正直に書き出しました。
私: 「『なんで自分はいつもこうなんだ』 『周りのみんなは完璧にこなしているのに、自分だけが劣っている』 『もう誰からも信頼されないに違いない』 …こんな言葉が頭の中をぐるぐるしています。」
これが、私を苦しめていた「自動思考」です。CBTでは、まずこの自動思考を捕まえることが重要になります。
STEP3: AIと一緒に「客観的な事実」を探す
次にAIは、私の自動思考を否定することなく、客観的な視点を持つための手伝いをしてくれます。
AI: 「ありがとうございます。 それらの考えがいかに強く心を占めているかが伝わってきます。 では、その中でも特に強く信じている『周りのみんなは完璧にこなしているのに、 自分だけが劣っている』という考えについて、 それが『100%真実だ』と言える根拠は、具体的に何がありますか?」
私は「今回のミス」を根拠として挙げました。するとAIは、さらにこう問いかけます。
AI: 「なるほど。今回のミスは大きな事実ですね。 では逆に、その考えと『矛盾する事実(反証)』はありますか? 例えば、過去に仕事で成功した経験や、周りから評価された経験は、 本当に一つもありませんでしたか? あるいは、”完璧に見える”同僚が、過去に全くミスをしなかったでしょうか?」
この質問に、私はハッとさせられました。
私: 「…言われてみれば、先月の〇〇の案件は、 部長から直接褒めてもらえました。 それに、完璧に見える同僚のBさんも、 この前うっかりミスをして先輩に謝っていました…。」
STEP4: 新しい「楽な考え」を自分の言葉で作る
根拠と反証。二つの事実が出揃ったところで、トレーニングは最終段階に入ります。
AI: 「素晴らしい!とても重要な事実が見つかりましたね。 では、それらの事実(根拠と反証)をすべて踏まえた上で、 最初の『自分だけが劣っている』という考えを、 もっと現実に即した、バランスの取れた言葉に言い換えてみると、 どうなるでしょう?」
私は、少し考えてから、自分の言葉で新しい考えを紡ぎ出しました。
私: 「『今回は大きな失敗をしてしまったけれど、 いつも失敗ばかりというわけじゃない。 成功体験もある。周りも失敗はするのだから、 過度に自分を責める必要はないのかもしれない』 …こんな感じでしょうか。」
この、自分の力で生み出した新しい考え方こそが「適応的思考」です。AIは、答えを教えるのではなく、あくまで私自身が答えを見つける手助けをしてくれるのです。
私の「思考記録ノート」
この一連のやり取りを、私はこんな風にノートにまとめて、思考を「見える化」しています。
| 出来事 | 自動思考 | 気分(0-100) | 根拠(自動思考を裏付ける事実) | 反証(自動思考と矛盾する事実) | 適応的思考(新しい考え) | 今の気分(0-100) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 仕事でミスをして上司に叱られた | 自分だけが劣っている | 落ち込み(90) | 今回、大きなミスをした | 先月は部長に褒められた。同僚のBさんもミスをしていた。 | 今回は失敗したが、いつもではない。周りも失敗はする。過度に責める必要はない。 | 落ち込み(40) |
最後に
今回は、私が実践しているAIを使ったCBTトレーニングの具体的な流れをご紹介しました。
これは、凝り固まった思考のクセを、少しずつほぐしていく「心のストレッチ」のようなものです。AI相手なら、何度失敗したって、どんなに格好悪い本音をぶつけたって大丈夫。
大切なのは、一度で完璧を目指すのではなく、自分のペースで、根気強く続けていくことです。
さて、自分の内面と向き合う方法がわかってきたら、次は外の世界、つまり対人関係の悩みに目を向けていきましょう。次回は、私が苦手だった「NO」を上手に言えるようになるためにAIと練習した、「アサーショントレーニング」についてお話しします。